第118回「ライター修業徒然草」第三段「合わせ技一本」

●「信頼・実績・即納・割安の四輪駆動経営」
 22年ぶりの慶事に浴した。わが母校のラグビー部が大学選手権で優勝した。それにしても22年。長かった。今世紀初にして平成ラストプレーでの快挙。選手在校生諸君、おめでとう。OBOG諸賢も、果てしなき冬の時代をよくぞ耐え抜いた。ささやかながら慶事を祝して、当サイトも復活したい。
 「前へ」「重戦車」「紫紺」「北島御大」。母校のラグビー部は強烈な個性をいくつも併せ持つ。伝説伝承、神話民話の類に事欠かない。
 半面、油断ならない現実を懸命かつ淡々と生きる人や組織の場合、際立つ個性を発散させているケースはさほど多くない。取材に出掛けて、困ることがある。ひと通り聞いても特筆すべきことが、なかなか出てこない。「見出し」が浮かんでこない。人や組織に価値がないわけではない。平凡なだけだ。
 有力メディアであれば、書かないという選択肢もあるだろう。しかし、筆者が主戦場としてきた小さなメディアでは、ボツなどもったいない。人にもカネにも恵まれないから、紙面はいつもがら空き状態。取材をしたらなんとかうまくまとめて原稿にするのが自然な流れだった。
 頼りになるのが合わせ技だ。フランス革命の「自由・平等・友愛(博愛)」であり、野球の「走攻守」、大相撲の「心技体」だ。一つひとつは平凡であっても、二つ、三つと組み合わせることで、それぞれの世界の独特の存在感のようなものを醸し出してくれる。
 「うちはニュースになりまへんで」と謙遜する中小のものづくり企業。「お客さんに喜んでもらうのが一番や」ということであれば、「顧客本位で自己実現」。「これからは作るだけやのうて、自前の販売ルートを持てたらええねんけど」となれば、文武両道にかこつけて「成長戦略は製販両道」。それでもなんにもなかったら「信頼・実績・即納・割安の四輪駆動経営」でもいい。去年より納期が少し早くなったら即納、割合に安ければ割安とうたえる。
 あきらめない。あちこちの引き出しを開けて時間ギリギリまで粘る、探す。最後は合わせ技一本。見栄えは多少冴えなくても、一本は一本だ。