2013-01-01から1年間の記事一覧

第70回:「ご神仏の仕事学」(16)山寺に讃美歌が響く

●石仏さまが聞いた「主は来ませり」 クリスマスを祝った数日後、大晦日にお寺で除夜の鐘をついたその足で、神社へ初詣を済ませ、新年を迎える。日本人の信仰に対する無節操さを揶揄するときに引用される歳末新春の光景です。しかし、私はこのふるまいにこそ…

第69回:「ご神仏の仕事学」(15)人間蓮如のダイナミズム

●「法然はやさしく」「親鸞は深く」「蓮如は広く」 手元の資料を整理していると、真宗大谷派難波別院が制作した「蓮如上人と大阪」と題する小冊子に再会しました。蓮如上人は浄土真宗中興の祖。作家の五木寛之さんは念仏の教えを説いた法然、親鸞、蓮如の三…

第68回/「ご神仏の仕事学」(14)西鶴VSオダサク

●マント姿のダンディズム 神社仏閣は地域のメモリー装置です。地域にまつわる史実や伝承を受け継ぎ、地元ゆかりの人物の足跡を記憶に留めるための顕彰碑が設置されています。大阪市天王寺区の生國魂(いくたま)神社にこのほど、大阪生まれの作家織田作之助…

第67回/「ご神仏の仕事学」(13)平成の寺小屋・鎮守の森教室

●お祭りの縁日は異空間 お祭りの舞台となる地元の神社。町内を練り歩いたおみこしやだんじりの宮入神事が、祭礼のクライマックスになるケースが多いようです。 子どもたちにとって、楽しみは縁日。境内や参道に立ち並ぶ縁日はとびっきりの異空間で、心の解放…

第66回/「ご神仏の仕事学」(12)お祭りは地域の一貫教育校

●夏祭りと秋祭りの違い 読者諸賢の地元や出身地では、秋祭りは終わりましたか。わたしの住むまちでは、一般的なおみこしではなく、「地車(だんじり)」が町内が練り歩きます。 お祭りが近づくと、若者たちが公園でだんじり囃子の稽古に余念がありません。五…

第65回/「しごと談議」(16)締め切り外しの悪夢

●悪夢の舞台は昭和の編集局 私の悪夢にはふたつの定番があります。ひとつは学期末試験に落第して大学を卒業できなくなる悪夢。年に数回うなされる程度ですが、もうひとつの悪夢は、週に数回の頻度で襲来します。新聞原稿の締め切り直前になって、原稿書きが…

第64回/ご神仏のしごと学(11)赤々と窯の火が燃えるまち

●大阪ガラス発祥の地 神社仏閣は公園と同様、地域の公共スペースの役割を兼ねているため、地域ゆかりの史実や伝承にちなむ顕彰碑が建立されるケースが少なくありません。社寺めぐりの楽しみのひとつです。大阪天満宮の一隅に、「大阪ガラス発祥之地」の石碑…

第63回/ご神仏の仕事学(10)神仏連携で青空見本市を同時開催

●均一台は「幻の戦後日本思想大全集」 きょう十一日、大阪を代表する青空古本市が二か所で同時に始まりました。場所は大阪天満宮と四天王寺です。大阪の有力古書店が境内にテント張りの仮設店舗を開設し、膨大な古書を運び込んで古本ファンを待ち受けていま…

第62回/しごと談議(15)月間千キロの併走

●惨敗の要因はスイーツの誘惑 野球、ラグビーに続いて、陸上長距離競技の監督です。関西に拠点を置く社会人女子有力チームの監督に取材したことがあります。 選手が寝食をともにしている合宿所の食堂で、監督と向き合いました。監督は学生時代、箱根駅伝の花…

第61回/しごと談義(14)勝っても負けても「いい試合だった」

●練習通りにやればいい 明大運動部、ふたりの「御大」伝説、前回の島岡吉郎野球部監督に続いて、ラグビー部の北島忠治監督について書きますが、昨日、悲しいアクシデントが起きてしまいました。対抗戦の対筑波大学戦。決してたやすい相手ではないものの、開…

しごと談義(13)監督のサインは「何とかせい!」

●ふたりの御大の共通項とは 星野楽天監督、西本幸雄氏つながりで、しばらくは職業としての監督論にふれてみようと思います。 私の母校明治大学には、かつてふたりの名物監督が存在していました。星野監督も指導を仰いだ島岡吉郎野球部監督と、北島忠治ラグビ…

しごと談義(12)西本幸雄監督の引退試合

●引退試合を無料開放 楽天イーグルズを劇的優勝に導いた星野監督、三球団またいでの優勝監督は三原脩(巨人、西鉄、大洋)、西本幸雄(大毎、阪急、近鉄)両氏に続いて三人目とのことです。私は西本さんの監督引退試合を生で観戦しました。 昭和五十六年(一…

しごと談義(11)「たそがれ清兵衛」ケースメソッド

●「今夜の豆腐汁は味がようござりますこと」 清兵衛は、出来上がった飯の支度を、茶の間に運び、妻女に喰わせながら自分も飯を喰う。 「おまえさま、今夜の豆腐汁は味がようござりますこと」 「うむ」 「食事の支度も、だんだんと手が上がるものと見えますな…

しごと談義(10)口下手外交官の逆襲

●体はでかいがノミの心臓 藤沢周平著「静かな木」。帯に「さよなら海坂藩」とある藤沢最晩年の作品集です。 本日取り上げるのは、この作品集に収録されている「偉丈夫」。主人公の片岡権兵衛は海坂(うなさか)藩の支藩である海上(うなかみ)藩の中堅武士で…

しごと談義(9)内弁慶の饒舌家

●プレゼンべたの扇動家もどき 「内弁慶の饒舌家」というやっかいな性格です。 心を許す身近な相手には、しゃべり出したら止まらないほどの話好きなのに、大事な場所ではちゃんと話せない。声が上ずり、かすれて、震えてくる。最悪の場合、噛み噛みになって、…

しごと談義(8)松屋町のすずめたち

●「今度友だち連れてきたるわ」 松屋町と書いて、「まっちゃまち」と読みます。大阪市中心部にある古くから人形やおもちゃのまちで、大阪商人の心意気が弾けるような響きです。 昭和三十年代、「三丁目の夕日」の時代、「松屋町のすずめ」たちであふれていま…

しごと談義(7)タイプライターを、どっこいしょと、どかして

●原稿をタテに書くナゾの民族 ソウル五輪、たったひとりの取材余話。二回目は異文化との接触について、少しばかり書くことにします。 1988年当時はワープロの出回り時期で、日本の新聞編集の現場では、ワープロ原稿と手書き原稿が混在していました。ところが…

しごと談義(6)たった一度のオリンピック取材

●単身派遣マイナー記者会を開設 世界陸上モスクワ大会が昨日、開幕しました。女子マラソンで福士選手がうれしい銅メダル。半面、男子百メートルでは桐生、山縣両選手に期待したものの、やはり予選敗退という残念な結果に終わりました。世界陸上の取材経験は…

しごと談義(5)マー君の顔はなぜひんまがるのか

●歴史的快挙とはなたれ小僧 開幕16連勝。田中将大選手の歴史的快挙に立ち会いたくて、昨夜はCS放送で楽天の試合をリアルタイムで観ました。 投げっぷりは予想通り、まったく危なげない。いつものように走者を背負ったときの顔がすごい。絶対に点をやらない。…

しごと談義(4)「勧進帳で送りまっせ」

●じゃらじゃら小銭鳴らして一目散 いささか古い、昭和の時代の夕刊紙噺が続いています。本日はまだ電話が貴重品だったころのお話です。 携帯電話のない時代、取材先から情報や原稿を送るには、固定電話を確保する必要がありました。 どこかのまちで立てこも…

しごと談義(3)撮影から紙焼きまで記者の務め

●暗室作業も体で覚えて 夕刊紙記者時代、選挙取材の続きです。 「注目の選挙区」の告示日、一面トップで行くことが決まりました。立候補者の「第一声」の写真を、横並びで平等に掲載します。 立候補者6人に対し、写真部のカメラマンはふたり。写真部員が張…

しごと談義(2)選挙取材と喫茶店のママ

●ひとりで乗り込む「注目の選挙区」 夕刊紙の記者時代、選挙の取材に繰り返し担当しました。 初陣は昭和61年7月の衆参同日選挙。今回と同様、自民が圧勝しましたが、この七夕開票選挙以来、多くの国政選挙、地方選挙を取材しました。 取材対象地域は大阪限…

しごと談義(1)中学生に教わりながら取材

●せみしぐれ存亡かけて白兵戦 夏の甲子園、代表校がまもなく出そろい、本戦が始まります。 大阪ではせみしぐれの降る中、中学生の準硬式野球大会が開かれます。準硬式は硬式と軟式の中間。通称「トップ」と呼ばれるボールを使った野球です。 ボールを手にす…

ストレス解消法(4)忍法・ストレス封じ

●ピンストライプの忍者 二十ページほどのまとまった取材と原稿作成に追われていました。ようやく一段落したと思ったら、当ブログは一か月以上もごぶさたしてしまいました。馬齢を重ねると、光陰矢のごとし。わが身の至らなさに落ち込んでいますが、ここは懲…

ご神仏の仕事学(9)御田植神事・働く厳しさと喜びと

●早乙女たちが古式豊かに 大阪・住吉大社できょう十四日、重要無形民俗文化財に指定されている御田植神事が厳粛に営まれました。早乙女たちが古式豊かに苗を植える労働そのものが神事になっています。ご神田の中央に設けられた舞台で、さまざまな芸能が奉納…

あべのハルカス参戦/大阪「丸にト」戦争激化

●エリア間競争待ったなし 本日はかつての私の主戦場だった夕刊紙のように、当日のニュースを速報します。 高さ三百メートルの日本一のビル「あべのハルカス」の開業第一弾として、百貨店「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市阿倍野区)が十三日午前、部分オー…

ストレス解消法(3)立ち呑みカウンセリングの東西比較

●東京は「孤独を楽しむ」沈思黙考酒 私がフィールドワークをしている大阪では、残念ながら経済的な地盤沈下に歯止めがかかりません。そんな中、店舗数が増えている数少ない業種のひとつと感じているのが、立ち呑み屋です。まちをふらついていると、閉店した…

ストレス解消法(2)スナックママのうなづきカウンセリング

「亜矢」「再会」「シルクロード」。 思い思いの店名のネオンを、集魚灯のようにともして、仕事から解放された男たちを待ちかまえる路地裏のスナック。昭和の仕事文化の考察に欠かせない不思議な空間でした。 カウンターだけの小さなスナック。いつもはママ…

ストレス解消法(1)答えはひとつではない

原稿書きの仕事で、ストレス解消法について、少し調べました。ストレスの原因を「ストレッサー」と呼び、ストレッサーと向き合う考えや振る舞い方を、「ストレスコーピング」といいます。 臨床心理やカウンセリングの世界では、次のようなエピソードがよく引…

ご神仏の仕事学(8)子猫から三段階で大出世

見上げんばかりの巨大灯篭から、手のひらサイズのお人形さんへ。住吉大社で繰り広げられる立身出世のファンタジーの世界へご案内しましょう。 私の手のひらに鎮座するのは「初辰(はったつ)人形」。身長三・六センチの小さな土人形です。毎月初めての辰の日…