第120回「ライター修業徒然草」第五段「5W1Hプラス1E」

●「たとえば」「たとえぱ」と食い下がる 記事の基本は5W1Hと言われる。異論はない。おさらいすると、「いつ」「どこで」「だれが」「何を」「なぜ」の5Wと、「どのように」の1H。駆け出しのころ、繰り返し叩き込まれたのが、プラス1Eだった。 Eとは、「for e…

第119回「ライター修業徒然草」第四段「四字熟語で威風堂々」

●「次は首位打者 年俸倍増で勇気凛々」 ライターは忍者であるべし。忍者の最大の使命は何か。生き延びて生還することだ。危機に直面しても決してあきらめない、わずかながらも可能性があるかぎり技を繰り出し、敵の目を欺いて窮地に活路を開く。 ライターも…

第118回「ライター修業徒然草」第三段「合わせ技一本」

●「信頼・実績・即納・割安の四輪駆動経営」 22年ぶりの慶事に浴した。わが母校のラグビー部が大学選手権で優勝した。それにしても22年。長かった。今世紀初にして平成ラストプレーでの快挙。選手在校生諸君、おめでとう。OBOG諸賢も、果てしなき冬の時代を…

第117回「ライター修業徒然草」第二段「まぶす」

●平板になりがちな原稿をひと手間で立体的に 好記録を達成したスポーツ選手とコーチに話を聞いた。取材はまずまず。できあがった原稿をデスクに渡す。 「こんなもんやろうが、ええ話ばっかりやなあ」 不満があるらしい。 「苦労話をちょっとまぶそうや。けが…

第116回「ライター修業徒然草」第一段「筆力がある」

●筆力とはこなれた文章を書く力 ライター歴、40年。どのようにして原稿書きの要領を覚えて、生き残ってきたか。自分自身の棚卸を兼ねて、ノウハウらしきものをつれづれなるままに書き出してみたい。 第1回。ライターにとっても、最良の誉め言葉は何か。「筆…

第115回「金メダルはうれしい」なら銀と銅の感触は?

金、銀、銅のメダルを獲得した元スケート選手。それぞれの感触を問われて、こう話す。 「金はうれしい、銀はくやしい、銅はほっとした」 簡潔にして深い。近年の名言だろう。

第114回「俺の目を見ろ」無言の戦闘宣言

●たったひとりの選手の目力がチームの奮起を促す ラグビー日本代表経験のある元有力選手に引退後、取材したことがある。現役時代は派手さこそないものの、相手にとってしつこい嫌なタイプの第三列として鳴らした。 タフな試合、後半の後半に入って負けている…

第113回分かっちゃいるけどノットリリースザボール

●倒れ込んでやっかいごとを抱え込むのが得意技 ラグビーのノットリリースザボールとは、タックルを受けて倒れた選手がボールを放さないときの反則。寝転がった選手はプレーできない。敵陣深く攻め込んでも、ボールを放したら相手に取られ、攻撃権を奪われか…

第112回スクラムが成立しない現代政治の悲しさ

●与党は歴史的善政を野党はコミュニケーションを 昭和晩期のラグビー早明戦。スクラムの情景は今と違っていた。 ワセダFW陣はひとり平均10キロも軽い。早々と陣形を整え、低く構えてメイジを待つ。決死隊の覚悟だ。 メイジFWはのっしのっしと歩いて集結…

第111回人生はスクラムハーフ

●自分に向かって「ユーズイット!」 最近、ひらめいた。人生はスクラムハーフだ。文法的におかしい。直観だ。 筆者はラグビーファン歴45年。ラグビーボールをさわったのは数回だけ。妄想的ラグビーファンという謙虚な自覚はある。 スクラムハーフの仕事は配…

第110回「採用するなら旧帝大生だけ」

●親父からの呼び出し電話 夜7時を過ぎていただろうか。アパートに隣接する大家さんが「電話ですよ」と声をかけてくれた。 故郷の親父からだった。 「やっぱり今年はだめらしい。少しは採るらしいが、旧帝大生だけと言われた」 声が低い。親父は機械メーカー…

第109回誠実そうな「氷山の一角」くんを信頼する私たち

●いつも幸せそうな「氷山の一角」さんがうらやましい 「まさかこんなひどいことをするなんて」。著名人の不祥事や組織の異常事態が表沙汰になった時のよくある反応のひとつだろう。「ショック…」「あいつはブレた」「裏切られた」となる。ひいき筋の不祥事に…

第108回「人の世はオペレーションで決まる」

●「俺は今 どこの党だと 秘書に聞き」 人が組織を形成する様子、人や組織が判断する様子に関する言葉を思いつくままに羅列してみよう。 連盟・連帯、連合(軍)、同盟(軍)、連判状、合意文書、組合、五人組、チーム、ユニット、コミュニティ、ネットワーク…

第107回大作「日本沈没」に出演(したらしい)

●「ドボーンと海へ落ちるやつはおらんか」 学生時代のバイト噺、今度はエキストラ出演。小松左京原作の大作「日本沈没」。朝早く都内からバスに乗せられて伊豆半島へ。日本列島が沈没する際、難民たちが船で確か朝鮮半島へ逃げるシーンの撮影だった。 「3時…

第106回鉄筆でガリガリ削る厳粛なるバイトとは?

●ピンナップガールたちに晴れて入国してもらうため 鬼班長の指導の下、筆者が機械油にまみれて旋盤に向かっていたころ、楽しいバイトをこなすうらやましい連中がいた、ようだ。筆者はバイトの現場に立ち会っていないから、以下、昔のうわさ話として聞いてほ…

第105回いかつい鬼班長の意外な質問とは?

●精一杯の作り笑いを浮かべて「あんた学生さんだろ?」 アルバイト先の町工場で鬼班長に出会った。鬼瓦かブルドックのような容貌のベテラン旋盤工だった。旋盤はむずかしい。削る部品を旋盤にギュッと締め付けてセットするだけで、非力な筆者は腕が痛くなっ…

第104回100人参加のトーナメント大会の試合数は?

●99人が負けなければ優勝が決まらないから99試合 柔道大会。100人の有力選手がトーナメント方式で戦うとしよう。引き分け再試合はない。 ここで質問。優勝者が決まるまで、何試合が必要か。答えは99試合だ。たったひとりの優勝者を出すために、残り99人全員…

第103回平凡な記録で敗れた選手への取材

●「おつかれっす、何を感じてますか、全部教えて」 国際試合をテレビ観戦していて、気になる選手たちがいる。伝統的な人気競技ではスポーツの盛んな欧米の選手が強いはずだ。ところが、欧米代表でも、あっさり負ける選手がいる。データをみると自己ベストが…

第102回ケース入りビールを担ぐ奥義を伝授

●「チョコンとのせるんだよ」「ちょこんですか?」 上京した初めての夏、学生アパートの先輩の紹介を得て、渋谷の酒問屋でバイトした。坂の上り口にある大きな問屋だった。主な取引先は渋谷周辺の飲食店で、常時、数人のバイトが待機。注文が入ると、2トン…

第101回合格電報屋という学生アルバイト

●受験生に代わって合格発表を見て打電 学生時代の思い出を少し。記憶があいまいなところがあり、まちがっていたらごめんなさいということで。 昭和40年代、筆者が通っていた首都圏の大学では入試時期、合格電報でひと稼ぎする学生たちがいた。試験当日、地方…

第100回幻の世界仕事人図鑑

●昆虫採集のように土地土地の仕事人を探しに行く 人に会って話を聞くライター稼業をこなしながら、ひとつ夢があった。この世にどんな仕事が存在するのか、調べてみたい。できれば昆虫採集のように、地球上をあちこち歩き回り、土地土地の仕事人と出会う。 許…

第99回機械油のにおいが帰ってくる

●機械とは無縁の事務屋にしみつくにおい 父親は工作機械メーカーに勤めていた。筆者が幼いころ、自転車で帰宅すると、機械油のにおいがした。機械のように硬いにおいだったが、嫌いではなかった。父親は事務屋だ。機械には向かわない。それでも毎日工場の一…

第98回ある中小企業が人員整理をしない理由とは?

●退職者と町で出会う「気まずさ」と「申し訳ない」 貸衣装店チェーンの突然の店舗閉鎖で、新成人たちが晴れ着を着られない事件が起きた。起業は多産多死。当初の志とは裏腹に、世間の指弾を浴びながら退場するケースが、残念ながら後を絶たない。従業員は路…

第97回大阪の高校ラグビーが強い理由とは?

●漫才・新喜劇から学ぶ縦横無尽の対話力 高校ラグビーは大阪対決となり、名勝負を演じた。今大会に限らず高校ラグビーで大阪勢が強いのは、なぜか。あるテレビ番組を観ていて気付いたことがある。日本代表の監督を務めたエディさんが東京の高校生チームを指…

第96回鬼の棲めない時代に

●鬼監督・鬼軍曹・仕事の鬼 19年ぶりに決勝へ進み、21年ぶりの日本一に挑んだ。1点差の惜敗だったものの、紫紺党の満足度は尽きない。諸君の獅子奮迅だけで十分だ。競技こそ違うものの、急死が伝えられたばかりのかの同窓の闘将も、笑顔で後輩たちの敢闘を…

第95回「しごと談義」(40)三谷幸喜は平成の山本周五郎

●「義の戦い」で国も民も疲れ果て NHK大河「真田丸」。先週分で、上杉景勝の情けない姿が浮き彫りになった。景勝が謙信の時代から続く「義の戦い」に明け暮れている間に、国も民も疲れ果ててしまう。景勝は漁民の小さないさかいの仲裁もできない状態に陥…

第94回「しごと談義」(39)ミルク代稼ぐため塁に出なあかんねん!

●生活がかかっている職業野球 BS日テレ「久米書店」より、「意識力」の著者で元プロ野球選手の宮本慎也をゲストに迎え、久米宏、壇蜜とのやりとりを要約して――。 久米「僕はプロ野球というより、戦前の職業野球という言い方の方が好きなんです。テレビの画面…

第93回「しごと談義」(38)ことばにこだわりを持たない日本人

●言霊思想は江戸期国学者のいじましい創作 「江戸時代の国学者たちは躍起になって言霊思想をつくりあげ国粋主義を鼓吹したが、日本人はもともとことばに深い信頼感や神聖感をもっていないのである。これは日本民族が、世界でも稀な文化的、言語的、生活的な…

第92回「しごと談義」(37)「うまくいえないけど、うまくいえないっすよ」

●必死に考えた末の誠実な中間報告 もっとも心に残るテレビドラマのひとつが「前略おふくろ様」。東京の下町に生きる愛すべき人間たちのこまごまとした喜怒哀楽を、さもありなんという心のひだに染み入るようなタッチで描き続けた。 萩原健一演じる主人公のさ…

第91回「しごと談義」(36)農民・野武士・傭兵・自由人

●戦国の世を闊歩した一人四役の曲者たち 『戦国の世には領主よりの年貢の取り立てに応ずる従順な農民たるをいさぎよしとせず、武器を手にしたいわゆる野武士たちが横行した。彼らは時には一種の傭兵として、その時その時の形勢に応じて、戦争を請け負ってき…