2013-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ご神仏の仕事学(4)頑固な封建エコ

ふるさと富山のお社に設置された一枚の案内板を手掛かりに、ご先祖たちに会いに、越中富山の新田開発の現場へ踏み込んでみます。いろいろな役職名が出てきますので、お見逃しなきように。 富山は地名の通り、名だたる山国。新田開発は急峻な山肌を滑り落ちて…

ご神仏の仕事学(3)アクセス可能な記憶装置

神社はアクセス可能な記憶装置。ありふれたまちなかのお社であっても、境内を歩けば、埋め込まれた記憶の糸口が見るかるはずです。 正月に郷里で撮影した写真を、いまごろになって整理していたところ、思わぬ発見がありました。 私のふるさとは北陸の富山市…

ご神仏の仕事学(2)新田開発と鎮守の森

江戸時代、河川が流れ込む湾岸部で、盛んに新田開発が行われました。 河川が運んでくる土砂を埋め立てに利用するものですが、大半を人力に依存する過酷な工事は成功率が低い。晴れて完成しても、台風で田畑が高波に呑み込まれてしまい、新田経営が破たんする…

ご神仏の仕事学(1)おみこし突入事件の真相

取材余話は、取材記者ならではの余禄です。 所定のテーマでつつがなく取材を終えて、そろそろ辞そうと、取材ノートをパタンと閉じる。腰を上げようとすると、「まあ待て、お茶を淹れ直すから」と引き留められる。こちらはひたすら恐縮するふりをしながらも、…

仕事の現場(12)守備に就く選手諸君に拍手!

学生時代に在籍していたサークルから、三十年以上もご無沙汰の私にも、律儀にOB会会報が送られてきます。最新号に目を通していると、OBたちの近況を伝える短信欄に、見覚えのある先輩の名前を発見しました。 ――ゼネコンで三十年、金融機関で七年。いずれ…

仕事の現場(11)機械油の匂い

最近、機械部品メーカーA社へ、取材でおじゃました際、懐かしい匂いと再会しました。 機械油の匂いです。亡くなった父親の匂いでもありました。 父は富山の代表的メーカーの一角であるB社に勤めていました。偶然ながらA社とB社は、ある機械部品分野で長らく…

仕事の現場(10)「さあさ、帰りましょ、帰りましょ!」

週休二日が当たり前になって久しい。しかし、昭和五十年代前半、私が勤めていた業界新聞社では、休みはまだ日曜日だけでした。 ただし、土曜日の勤務は、午後三時まで。いつもより二時間ほど早く終わるだけなのに、その日の社内は、朝からのんびりムード。ち…

仕事の現場(9)人生初の取材は帯締めの展示会

私がデパート関連の業界紙にいた昭和五十年代前半、デパート業界では「年商で天下の三越が安売りのダイエーに抜かれた」という事実が衝撃波となって伝わり、いまださまざまな波紋を引き起こしているさなかでした。 高度経済成長期は二度のオイルショックを経…

仕事の現場(8)「頑固一徹」という名の文化装置

無口で頑固。人間嫌いで融通が利かない。職人気質の人間たちと、どのように付き合えばいいのか。ふた通りあるように思われます。 ひとつは「従順なる太鼓持ち」タイプ。ひたすら下手(したで)に出て、職人さんを持ちあげて機嫌良く仕事をしてもらう。活字を…

仕事の現場(7)最後は松ヤニの出番

出張校正室では、各紙の記者が数名ずつ固まって、あちこちで店を広げています。 業界紙、機関紙、広報紙。少部数で読者も限定され、世間では知られていない新聞ばかりです。いつもは日の当たらぬ地味な仕事にうんざりし、不機嫌で口も重たい連中が、なぜか冗…

仕事の現場(6)左右反対の鏡の世界

昭和五十年代、東京・新橋の印刷所。出張校正室から工場へ降りてきました。大組み担当者にレイアウト用紙を渡すと、いよいよ大組み開始です。 一面ごとに一対一。私の新聞は四ページ建てですから、四つの台に分かれて大組みが始まりました。 レイアウトの方…

仕事の現場(5)××新聞さ〜ん、大組みで〜す!

私が新聞業界に入った昭和50年代、活版印刷の時代でした。 文選工と呼ばれる人たちが、鉛でできた活字をひと文字ずつ拾って、ひと文字ずつ一行ずつ、文章を組み立てていく。小組みとよばれる工程です。 当時の新聞は一行十五字組み。三十行の小さな記事でも…

仕事の現場(4)/長短可・委細面談・応相談

昭和五十一年、私が入社した求人情報誌は若々しい職場でした。社員の大半が二十代、三十代前半。四十代以上は幹部などのごく一部だけ。ほとんど二十代の編集部はとても仲が良かった。 ひとつだけ困ったのは風呂に入れないこと。毎日、仕事が終わると、編集部…

仕事の現場(3)ガリ版・和文タイプ・写植の切り張り

北陸のとある地方新聞社。昭和五十一年度は新卒を採用しません。それでも諦めの悪いひとりの学生が本社を訪ねますが、正面玄関ではなく、裏手の守衛室へ。学生ですけど編集局へ行きたいのですがと告げると、守衛さんがそうかと通してくれました。厳重警備体…

仕事の現場(2)「新卒要りませんか」「間に合ってるよ」

ここからしばらくは昭和の時代、小さなメディアで働いていたころの思い出話を聞いてください。今の若い人にはわからない仕事の仕組みが出てくるかもしれません。 昭和五十一年四月、私は大学を出て、求人情報誌の一員になりました。第二次オイルショックに伴…