「声が小さいっ!」「やり直しい!!」

 本日は大阪・京橋から京阪電車にて、京都へ。PR誌の月に一度の定例編集会議に出席しました。会議を終えて、市内をぶらり歩いたときの発見を報告いたします。
 昨日は料理人の「修業」の世界を論じましたが、本日はお坊さんの「修行」のお話。とある古刹(こさつ)を参拝したところ、本堂から読経の声が聞こえてきました。
 本堂におじゃますると、数名の小僧さんたちがお経の稽古をしているようです。中には小学生と思しき、文字通りの小僧さんもいます。長老風のお坊さんが数名、監督していますが、この指導がとてつもなく厳しい。
「声が小さいっ!」「やり直しい!」
 何よりも叱咤の大音声がすごい。腹式呼吸というのでしょうか、丹田あたりから昇竜のごとくあふれ出て、本堂をバリバリバリと振動させんばかりの勢い。小僧さんたちとは、明らかに年季が違います。
 有無を言わせない。小僧さんたちは黙々と指示に従いますが、わたしまでビビりながら、ひとつのことに気づきました。
――誰かがこんなにガツンと叱られるのを見るのは、久しぶりだなあ。
 学校や職場、スポーツの現場などで、心優しき指導が主流になりつつあります。相手を威圧するような強い言葉は暴言、言葉の暴力として排除されつつあります。そうした傾向の中、本日の修行の言葉は、目が覚めるほど厳しいものでした。
 小僧さんの足元をみると、靴下や足袋ははいていない。裸足です。桜の季節を迎えたとはいえ、まだまだ朝晩の冷え込みはつらかろう。
 人を育てることは、いかにあるべきか。答えを急がない。永遠の命題であり、答えはひとつでないかもしれない。徒労を覚悟の上で知恵を絞りあい、あれこれ試行錯誤していくべきでしょう。修業と修行。どちらも大切にしたい言葉です。