転職のフォークロア(5)怒涛のポテンヒット

 ――私自身を含めて、あまり自慢できるわけではありませんが、連敗記録も立派な戦績です。
 前回のブログで、このように書きました。一社員記者、編集局長、非正規の契約記者など、働く形態は違いますが、連続して深くかかわった三つの夕刊紙と、ひとつの地域情報誌がすべて休刊に追い込まれました。
 空白期間はありますが、二十八年ほどの間で、「四連敗」です。市場が縮小している関西の中小メディア界では、私のような連敗記録ホルダーが少なからずいます。
 お互いに武運つたなく、としか言いようがありません。ときに敗戦処理のような苦しい戦いが続く中で、私なりによりどころとしてきたのは、規定打数の達成でした。
 打てそうになくても、あきらめずに打席に立つ。立ち続けるには守備も鍛えなければいけないし、チームの信頼も得なければいけません。凡打の山を築いていても、たまにはポテンヒットでもいい。得点につながる仕事をしなければいけません。
 苦しいやりくりをしながら、打率が二割三分でもいい。規定打数に届いて、打撃ランキングに最下位でもいいから、滑り込むことが大事なんだと、自分自身に言い聞かせてきました。
 バットならぬエンピツ一本担いでの転戦となりました。幸いにも大きなケガもなく、丈夫で長持ち。何とか毎年のように規定打数に達することができました。ふと周囲を見回すと、先輩はおろか、同世代の選手たちがめっきり少なくなってしまいました。
 ここ二年あまりは規定打数に及びませんが、通算出場記録は更新中です。
 いつでもスタンバイ。いざ場内アナウンスで名前を呼ばれれば、実戦で鍛えし怒涛のポテンヒットをお見せしましょう。
 大谷翔平には負けへんで。藤浪よ、かかってこんかい!