仕事の現場(12)守備に就く選手諸君に拍手!

 学生時代に在籍していたサークルから、三十年以上もご無沙汰の私にも、律儀にOB会会報が送られてきます。最新号に目を通していると、OBたちの近況を伝える短信欄に、見覚えのある先輩の名前を発見しました。
 ――ゼネコンで三十年、金融機関で七年。いずれも上場会社で、広報部長や総務部長などを務めましたが、両社とも法的整理(民事再生と会社更生)を経験。いまは人材紹介の仕事についています。第二の人生を、人のためにお役にたてればと思っています。
 自慢話のオンパレードになりがちなOB会報に、ほろ苦い挫折の体験はなかなか書けないもの。率直に記した先輩の勇気と見識に、敬意を表したいと思います。
 私は夕刊紙3連敗、先輩は上場会社2連敗。パラダイムシフトの大転換期、業種や会社規模は違っても、日本全国には、連敗記録を持つ人たちがたくさんいることでしょう。
 ――あのとき、こうしておけば。
 大いに悔いの残るところでしょうが、負けは負け。苦しい思いをした半面、幹部なら少なからぬ人たちに迷惑もかけたのも事実。一切合財を潔く認めて、なお新しい仕事に向き合っていくのが、連敗記録保持者の使命でしょう。人知れず、孤独な局地戦が続きます。
 先輩とも観戦に出かけた大学野球の学生席スタンド。自軍の攻撃が終わった後、応援団が学生たちに呼びかけます。
 ――守備に就くゥ、選手諸君にィ、応援のォ、拍手〜ッ!
 偶然ながら、われらが母校の野球部は本日、逆転優勝をかけた一戦に臨んでいます。
 人生も心弾む攻撃ばかりではない。ひたすら耐え抜く守備の時間もあるものです。
 互いに顔も名前も知らなくとも、みんな「全日本連敗記録選抜」チームの一員。栄えある戦士同士、エールを送りあいましょう。