あべのハルカス参戦/大阪「丸にト」戦争激化

●エリア間競争待ったなし
 本日はかつての私の主戦場だった夕刊紙のように、当日のニュースを速報します。
 高さ三百メートルの日本一のビル「あべのハルカス」の開業第一弾として、百貨店「あべのハルカス近鉄本店」(大阪市阿倍野区)が十三日午前、部分オープンしました。来春の全面開業時には売り場面積十万平方メートルを擁する、日本最大の百貨店へ進化します。
 大阪では大手百貨店やカテゴリーキラーの専門店が生き残りをかけ、エリア戦争を展開しています。
 エリア間競争に勝利したうえで、エリア内の内戦にも勝ち残らねばならない。すでに大阪はオーバーストア状態ともささやかれていますが、各店とも人事を尽くして天命を待つ。各店舗各部署の当事者たちは、夜も眠れないプレッシャーとも戦っているのではないでしょうか。
 「丸に十」は薩摩・島津藩の家紋ですが、大阪の都市構造は丸にカタカナのト、「丸にト」のかたちをしています。丸は東京・山手線に当たる大阪環状線のシルエット。
 円の真ん中をまっすぐ南北に貫くラインが御堂筋。円とラインの上の交差ポイントが大阪駅、梅田駅を要する「キタ」の大繁華街。そのまま下った中心部がビジネス街の本町(ほんまち)。さらに南下すると、心斎橋から難波というもうひとつの大繁華街を形成しており、「ミナミ」と呼ばれています。エリア的にはミナミの方がやや広がりがあるでしょうか。
 「キタ」と「ミナミ」は源平合戦早慶戦のようにライバル心をむき出しにして、南北戦争を展開してきました。
●第三極の躍進目指しつつ「南大阪大連合」構想も
 この南北対決を、斜めから睨み付け、すきあらば、どちらかを食ってやろうと虎視眈々と狙うのが、阿倍野天王寺エリア。トの字の右斜め下向きのテンを、丸に届くまで勢いよく伸ばしたような感じです。
 このエリアの浮沈を握る旗艦ビルが、あべのハルカスです。まちぐるみ、テーマパークにしたいような不思議な魅力を放つ「新世界」が隣接しています。その新世界からはミナミもそう遠くはない。そこで、心斎橋、難波、阿倍野天王寺、新世界に、東京のアキバに相当するサブカルのまち日本橋(にっぽんばし)などを糾合し、奥羽列藩同盟のようにゆるやかな南大阪大連合軍を結成して、官軍・キタに対峙しようという作戦が、水面下で有志が集まっては画策されているようです。
 とまれ、「丸にト」戦争、さらに激化。夕刊紙風に勇ましい見出しとは裏腹に、ご当地は日本一のビルを借景に、チンチン電車がゆったり走る庶民の街。同じ通りに面し、昭和な純喫茶も残っています。
 大阪へお越しの際は、キタやミナミに留まらず、ぜひ阿倍野天王寺まで足を運んでください。チンチン電車に揺られると、住吉大社や、世界に開かれていた中世の自由都市・堺へも、ひとっ走りで行けます。