ご神仏の仕事学(9)御田植神事・働く厳しさと喜びと


●早乙女たちが古式豊かに
 大阪・住吉大社できょう十四日、重要無形民俗文化財に指定されている御田植神事が厳粛に営まれました。早乙女たちが古式豊かに苗を植える労働そのものが神事になっています。ご神田の中央に設けられた舞台で、さまざまな芸能が奉納され、田んぼの神様に感謝するとともに、豊作を祈りました。
 鎧兜姿の武者集団が登場し、ほら貝を吹き、太鼓を打ち鳴らすのは、害虫たちを驚かせて退治するため。一見、武士と農業はかかわりが薄いようにみえますが、身近にある呪力や武力を応用転用して害虫を退治する発想は、人類学者クロード・レビィ=ストロースのブリコラージュ理論ともつながっているのではないかと感じました。少年剣士による源平合戦はとても鮮やかな情景でした。
●田んぼに響くワークソング
 労働歌、ワークソングである田植え歌も登場。腰をかがめて作業する田植えは重労働。皆で調子を合わせて歌ったり踊ったりすることで、労働のつらさを和らげようという先人たちの知恵でした。最後は住吉名物の「住吉踊」が大勢の少女たちによって奉納されました。
 はるか昔から、日本社会では、四季を通じて津々浦々で労働に関する神事が行われ、田植え歌などのワークソングも奉納されたことでしょう。少年少女たちが神事の手伝いに駆り出され、「よくやった」と褒められながら、少しずつ確実に社会の一翼を担っていく。
 労働はなんびとにとっても、つらく厳しい半面、喜びと手ごたえに満ち満ちているはずです。仕事を通じて人間としても成長できます。少年少女たちの献身ぶりを間近にみて、ときおり目頭が熱くなったのは、季節外れの猛暑のせいだったのかもしれません。