第63回/ご神仏の仕事学(10)神仏連携で青空見本市を同時開催

●均一台は「幻の戦後日本思想大全集」
 きょう十一日、大阪を代表する青空古本市が二か所で同時に始まりました。場所は大阪天満宮四天王寺です。大阪の有力古書店が境内にテント張りの仮設店舗を開設し、膨大な古書を運び込んで古本ファンを待ち受けています。
 さながら自然と一体になった神仏混淆古本市。しかも、ふたつの会場は地下鉄谷町線一本で結ばれています。そのため大阪中の古本好きおやじたちが集まり、電車でぞろぞろ移動しながら、掘り出しもん探しに追われています。私もさっそく出掛けてきました。
 私の楽しみは百円均一台。雨が降るやもとの予報が外れてよかった半面、よもやの猛暑がぶりかえしました。テントのない露店の均一コーナーには直射日光が容赦なく突き刺さります。しかし、おやじたちは「暑い」「かなわん」とぼやきつつも、両手は忙しく古本の山を掻き分け、容易に撤収しようとはしません。
 柳田国男吉本隆明井上靖吉川英治高橋和己、黒田寛一。戦後日本の思想形成に、直接あるいは間接的に関与してきた思想家、作家たちの作品が、重厚な装いのまま均一台に並んでいます。かなり「イタイ情景」ですが、これもまた現実として受け止めざるを得ません。均一台は「幻の戦後日本思想大全集」。戦後の日本人が何を考え、どのように生きようとしていたのか。何に苦しみ、どのようにしか生きられなかったのか。均一台から垣間見えるような気もします。