第85回「しごと談議」(30)ぶれまくる昌幸

七転八倒しながら「分からん」
 NHK大河ドラマ真田丸」。幸村の父昌幸がいい。真田家は四方を大大名に囲まれたしがない国衆のひとり。やむなく属した武田家が滅びた後、今度はどの勢力につくか。
 迷った挙句、昌幸は息子にくじを引かせて決めようにする。ようやく戦略を固めたものの、息子に「それで真田家は生き残れますか」と質されて、答えは「分からん」。
 この「分からん」がいい。歴史ドラマ史上、名だたる武将に「分からん」と発言させたのは、三谷が初めてではないか。
 ぶれにぶれまくる。七転八倒しながら「分からん」とうめくしかない。むしろ、明快な答えなどあるわけがないのは、のちの複雑怪奇な天下の転がり方をみれば納得がいく。
 中島みゆきの「地上の星」ではないが、「地上の昌幸」たちはぶれにぶれ、「分からん」を連発しながら、それでも生きていくしかない。