第86回「しごと談義」(31)家康を好きになってしまいそう

●「真田丸」を攪乱する「臨場」のライバル
 「真田丸」、滑り出しは悪くない。ただひとつ、困ったことがある。家康を好きになってしまいそうだ。
 私は分かりやすい昭和の判官びいき男。家康は歴史上、もっとも毛嫌いする人物のひとりだったが、三谷「真田丸」の家康で、長年の「家康嫌い」に別れを告げそうな按配になりかけている。
 家康を演じる内野聖陽のとぼけ方が秀逸。北条氏政役、高嶋政伸の劇画チックな怪演とセットで、おもしろくてたまらない。この内野VS高嶋は、警察ドラマ「臨場」の名ライバルでもあるから、当然といえば当然か。
 陰湿な古だぬきか手堅い善人かの二択しかなかった家康像を、小気味よくひっくり返す。めったに起きぬことが、めったにだが起きてしまう。まったくだめだったパ・リーグから突然、イチローが現れたように。だからあきらめてはならない。