第95回「しごと談義」(40)三谷幸喜は平成の山本周五郎

●「義の戦い」で国も民も疲れ果て
 NHK大河「真田丸」。先週分で、上杉景勝の情けない姿が浮き彫りになった。景勝が謙信の時代から続く「義の戦い」に明け暮れている間に、国も民も疲れ果ててしまう。景勝は漁民の小さないさかいの仲裁もできない状態に陥っている。
 名将と呼ばれる景勝でさえ、義に酔っているだけ。世の中に英雄なんぞいない。三谷真田丸のひとつの成果だろう。山本周五郎の世界にも通じ合う世界観だ。自信を失っている景勝の後ろ姿が小さく見えた。それでも、十分にかっこいい。演じる遠藤憲一もすぐれた役者なのだろう。
 ありていにいえば、権力者たちの身勝手な闘争を描く歴史ドラマに、ふと民の視点を持ち込むのは、いわばマナー違反だろう。「野暮なことはいいなさんな」となる。しかし、格段にすぐれた技芸を持つ周五郎あたりが成功したように、三谷の技量もなかなかのものだと感服した次第。