第96回鬼の棲めない時代に

●鬼監督・鬼軍曹・仕事の鬼
 19年ぶりに決勝へ進み、21年ぶりの日本一に挑んだ。1点差の惜敗だったものの、紫紺党の満足度は尽きない。諸君の獅子奮迅だけで十分だ。競技こそ違うものの、急死が伝えられたばかりのかの同窓の闘将も、笑顔で後輩たちの敢闘をたたえているに違いない。
 闘将は鬼として恐れられた。鬼監督、鬼コーチ、鬼課長、鬼軍曹、仕事の鬼。昭和から平成初期にかけ、この国には至るところに鬼がいた。恐れられながら人を鍛え、のちに愛された。いまは「のちに」の間が許されない。指導者には、いまこの瞬間に愛される人間であることが求められる。
 鬼の棲めない時代になった。稀代の闘将は最後の闘将になるのだろうか。惜別と再生。ときにふらつき、倒れそうになりながらも、闘将の思いを胸に、前へ――。