第97回大阪の高校ラグビーが強い理由とは?

●漫才・新喜劇から学ぶ縦横無尽の対話力
 高校ラグビーは大阪対決となり、名勝負を演じた。今大会に限らず高校ラグビーで大阪勢が強いのは、なぜか。あるテレビ番組を観ていて気付いたことがある。日本代表の監督を務めたエディさんが東京の高校生チームを指導する番組だ。
 エディさんがもっとも強調したのは、コミュニケーション。筆者はラグビーおたくながら、ラグビーボールに数回しか触ったことがないという特殊な人生を歩む。ラグビー選手がでかい声をあげるのは、気合を入れるためだけではないと、初めて理解した。
 静かでおとなしいチームがエディさんの指摘を受けて対話を始めると、短時間で変わる。成果を出す。ディフェンスが良くなり、攻撃もボールをつないで突破力を強化。番組の最後には、Bチームながら有力大学の格上チームに勝つまでに急成長を果たす。
 コミュニケーションとは何か。選手たちが互いにどこにいるかを、声によって確認し合う。両チームで30人が点在する広大なフィールドという世界と、プロセス重視のトライに欠かせない時間の流れ。つまり「時空」を声出しで共有掌握するわけだ。
「俺はここや。5番のマークにいくで」「よっしゃ、まかせた。俺は8番に必殺タックルかましたる」、(声をそろえて)「どりゃー!」
 あえて大阪弁のやりとりにしたことで、冒頭の問いの正解が分かったはずだ。大阪勢は日々の練習や共同生活を通じてコミュニケーションがとれている。試合前からだ。
 寡黙な地方のチームや、しれっとした会話を好む都会のチームとは一線を画す。大阪では、漫才風のボケツッコミや新喜劇風の定番ギャグなどをまじえて、日ごろから縦横無尽のコミュニケーションが交わされている。
 大阪人は寝ているとき以外、いつでもだれかと何かをしゃべっている。図々しい、やかましい、デリカシーがない、人の心を土足で踏みにじる……。さまざまな悪評は耳に入るものの、ことラグビーに関しては、対話力の高さが大阪勢にかなりのアドバンテージを与えていると思う(寡黙と思われるみちのく秋田工業が強いのは、この理論に当てはまらないので、ごめんなさい)。
 なんとか隅っこのトライまでこぎつけた感があるので終わるつもりだったが、もうひとつ気付いたことがある。
 番組でのエディさんのかなりきつめの指導が印象深い。しかもウイットに富む。前回の闘将論の続きになるが、エディさんも歴史に残る闘将に違いない。