第111回人生はスクラムハーフ

●自分に向かって「ユーズイット!」
 最近、ひらめいた。人生はスクラムハーフだ。文法的におかしい。直観だ。
筆者はラグビーファン歴45年。ラグビーボールをさわったのは数回だけ。妄想的ラグビーファンという謙虚な自覚はある。
 スクラムハーフの仕事は配球。スクラムやモール、ラックから出たボールの配球方法には選択肢がある。パス、キック。3つ目が自分でボールを持って前へ。どの方法を選んでも、どのスペースへボールを移動させるかで、選択肢はどんどん増えていく。
 ただし、スクラムハーフ最大の任務は、すばやい球出しだ。どの選択肢を選ぶにしろ、遅ければ勝機は遅れた分だけ遠ざかる。「想定外の事態に遭遇したものの、熟慮に熟慮を重ねて総合的に判断して、貴君にパスすることにした」――なんてやってられない。
 迷っているひまはない。結果はともあれ、パスする、蹴る、自分で突っ込む。それから先? また考えるしかしゃあない。開き直りだ。
 どんな素晴らしいボールでも動かさないと生きてこない。動いてこそ、勝機が生まれる。動かすうちに輝いてくる。若い世代に言いたい。よく考えろ、深く考えよ。ただし考えすぎるな。動きながら考えればええやないか。
 ――ユーズイット!
 自分に向かって、叫ぼう。はよ、出せや。みんな待っているで。