第113回分かっちゃいるけどノットリリースザボール

●倒れ込んでやっかいごとを抱え込むのが得意技
 ラグビーノットリリースザボールとは、タックルを受けて倒れた選手がボールを放さないときの反則。寝転がった選手はプレーできない。敵陣深く攻め込んでも、ボールを放したら相手に取られ、攻撃権を奪われかねない。だから味方の選手のフォローが遅いときに、つい抱え込んでしまう。あくまでも攻めたいがゆえの反則だ。
 筆者はやっかいごとを抱え込んでしまう。マイナスの反則である。問題は直視し、すばやく対策を講じると、影響は小さくて済む。分かっていながらできない。ぐずぐず、うじうじ、ぐだぐだ。悩んでいる状態が、常態化している。
 若いころ著書にサインをしてもらったベテランの心理学者がいう。「悩んでいる最中は行動しなくていい。いつまでも悩んでいる方が、本人にとって楽なんですよ」。悩み相談のプロの意外な読み解きだ。
 人気学者だからと言ってひどい。残酷な言い回しだろう。当たっているから怖い。けっこうなエネルギーを費やす「うじうじ悩み力」を、なんとか得意技に磨きあげ、反転攻撃に生かせないものか。