第90回「しごと談義」(35)創業1200年のパン屋さん

●「新しくなくて悪かったな力」 雑用をしながら見たBSの旅番組。タレントが鉄道で世界各地を散策する。確かオーストリアで、モーツァルトゆかりの地方都市。パン屋さんの創業は1200年前。今も自前の水車で製粉し、300年前の窯をパンを焼いているという。 近…

第89回「しごと談義」(34)「立て板に水」VS「言い淀む」

●相手の沈黙に耐えられる記者いますか? 現象学や臨床心理の観点からすると、我々のしゃべっていることのほとんどは、自分のオリジナルではないらしい。どこかでだれかから仕入れたネタばかりで構成されている。 自信たっぷりの「立て板に水」ほど、当人の考…

第88回「しごと談義」(33)哀愁の王道をともに歩く

●哀愁系ワーカーたちのレーゾンデートル ホテルマン、商社マン、銀行マン、カメラマンなど、マンの付く表現をメディアは使わなくなった。女性労働者への配慮が働く。 サラリーマンの表現も最近はめったに見かけない。サラリーマンはビジネスパーソンに置き換…

第87回「しごと談義」(32)深夜スーパーで何?

●監督いわく「あしたは玉砕戦だ」 「真田丸」女優陣の現代風せりふ回しが「らしくない」と、一部でひんしゅくを買っているらしい。逆に、ライター仕事で原稿を書きながら、「あっ、こんな表現、使わんようになったなあ」と、感じることがある。記事作成上の…

第86回「しごと談義」(31)家康を好きになってしまいそう

●「真田丸」を攪乱する「臨場」のライバル 「真田丸」、滑り出しは悪くない。ただひとつ、困ったことがある。家康を好きになってしまいそうだ。 私は分かりやすい昭和の判官びいき男。家康は歴史上、もっとも毛嫌いする人物のひとりだったが、三谷「真田丸」…

第85回「しごと談議」(30)ぶれまくる昌幸

●七転八倒しながら「分からん」 NHK大河ドラマ「真田丸」。幸村の父昌幸がいい。真田家は四方を大大名に囲まれたしがない国衆のひとり。やむなく属した武田家が滅びた後、今度はどの勢力につくか。 迷った挙句、昌幸は息子にくじを引かせて決めようにする。…

第84回「しごと談議」(29)コーヒー一杯の不幸せ

●未開の地で差し出す贈り物 これまたある日どこかで、日本の人類学者たちが、という物語です。 未開の地に長らくフィールドワークに入っていた研究者たちに、日本へ引き揚げるときが訪れました。 そのころには、子どもたちが研究者たちのテントに遊びに来る…

第83回「しごと談議」(28)「十分話し合ったから許可します」

●古文書貸し出しを巡り会議を数日間 こんな意思決定の方法もあります――という話の続きです。 きょうは私の敬愛する民俗学者の逸話ですが、ネタ本が出てこず、詳細を確かめられません。よって、むかしあるところで、ある学者が、とさせていただきます。 ある…

第82回「しごと談議」(27)「私はいちばんの候補者に投票します」

●自分の意見を主張しません宣言 真面目に選挙制度改革に取り組んでいる皆さんが読んだら、湯気をあげて怒りそうな話になるかもしれません。 江戸時代の大坂。曲がりなりにも大商人たちによる自治制度が確立されていました。現在の区長に相当する町役人を決め…

第81回「しごと談議」(26)「神仏習合」と「鬼平犯科帳」

●インドの神さんがたまたま日本へ 『ともかくも、八、九世紀における神仏習合は、たぶんに窮余の策ながら、日本人最初の独創的な着想だったにちがいない』 司馬遼太郎さんの「この国のかたち(五)」(文春文庫・27ページ)からの引用です。 日本人は水と油…

第80回「しごと談議」(25)「動的均衡」と「臨機応変」

●繁盛商店街も顔ぶれは変わっている きょうは「しょうがないからあきらめよう」という話をします。 私たちは古い街並みに「昔のまんまの佇まい」を求めます。少しでも手が加わっていると、その分だけ価値が低い「残念な」気になります。 しかし、よくよくみ…

第79回「しごと談議」(24)「『ちょいおた』と『おたおた』」

●「のめりこみ型」と「何でも屋型」 取材歴ウン十年というのは事実ではありますが、私には専門分野がありません。「広〜く、薄〜く」のまんま、馬齢を重ねてしまいました。 かつて私が所属していた関西夕刊紙の世界には、ふたとおりの記者がいました。 ひと…

第78回「しごと談議」(23)「テーマ評論から雑感取りへ」

●四年ぶりに忙しくしています この夏あたりから、ほぼ四年ぶりに超多忙となり、取材に追われる怒涛のごとき日々を過ごしています。仕事の性格上、詳細な公開は差し控えますが、家族や友人たちは私のドタバタぶりをしり目に、「あんたらしくてええやないか」…

第77回「しごと談議」(22)「俺を真似ろ」と勝新が言った本当の理由

●鬼才勝新は古典芸能の名手だった サッカーは古典芸能であると、前回書きました。古典芸能つながりで、話題をもうひとつ。先日、テレビのトークコーナーで、俳優の松平健が、師匠だった勝新太郎の逸話を披露しました。 松平は勝新の付き人でした。この付き人…

第76回「しごと談議」(21)サッカーは古典芸能

●型を真似て身に付け壊す サッカーW杯ブラジル大会。完敗で予選落ちした日本代表に関して、「自分たちのサッカー」論が盛んに論議されています。 「自分たちのサッカーを徹底できなかったから負けた」「自分たちのサッカーにこだわるべきではない」という二…

第75回「しごと談議」(20)蔵屋敷で働く

●殿様専用VIPルームのない土蔵限定蔵屋敷 大阪市北区の中之島できょう10日開かれた蔵屋敷跡地の現地説明会に参加してきました。天下の台所・大坂の一端を垣間見ることができる貴重な体験でした。 現地説明会が開かれたのは、中之島六丁目の大阪国際会議場西…

第74回「ご神仏の仕事学」(17)大念佛寺の万部おねり

●黄金仮面の菩薩たちが次々と登場 大阪市平野区の融通念佛宗の総本山、大念佛寺で、五月一日、阿弥陀如来来迎の情景をあでやかに再現する法要「万部(まんぶ)おねり」が始まり、多くの信徒からが詰めかけ、熱心に魅入っていました。 この法要は、阿弥陀信仰…

第73回「しごと談議」(19)締め切り外しの悪夢・続報

●『紅白歌合戦』四年連続の快挙 第65回「しごと談議」(16)で「締め切り外しの悪夢」と題し、締め切りが迫っても原稿が書けない悪夢に、繰り返し繰り返しうなされる話を告白しました。プロの資格を根底から覆されかねない致命的な悪夢で、目が覚めても衝撃…

第72回「しごと談議」(18)若手大工集団の威風堂々

●ウィーン、バチンバチンバチン 団地住まいのわが家で、バリフリー対応の改修工事が行われました。きのうはベテランの電気工事担当者が来訪。照明などのスイッチを、シニアでも操作しやすいデザイン、機能のものに、手際よく交換してくれました。トイレで動…

第71回:「しごと談議」(17)ボールペンのインクが凍った朝

●昭和末期真冬の市場取材 太平洋側を波状的に襲った寒波で、首都圏が二十年ぶりという大雪に見舞われ、混乱しているようです。大阪も積雪こそないものの、なかなか気合の入った冷え込みが続いています。私の住む団地では、おりしもエレベーター工事の真っ最…

第70回:「ご神仏の仕事学」(16)山寺に讃美歌が響く

●石仏さまが聞いた「主は来ませり」 クリスマスを祝った数日後、大晦日にお寺で除夜の鐘をついたその足で、神社へ初詣を済ませ、新年を迎える。日本人の信仰に対する無節操さを揶揄するときに引用される歳末新春の光景です。しかし、私はこのふるまいにこそ…

第69回:「ご神仏の仕事学」(15)人間蓮如のダイナミズム

●「法然はやさしく」「親鸞は深く」「蓮如は広く」 手元の資料を整理していると、真宗大谷派難波別院が制作した「蓮如上人と大阪」と題する小冊子に再会しました。蓮如上人は浄土真宗中興の祖。作家の五木寛之さんは念仏の教えを説いた法然、親鸞、蓮如の三…

第68回/「ご神仏の仕事学」(14)西鶴VSオダサク

●マント姿のダンディズム 神社仏閣は地域のメモリー装置です。地域にまつわる史実や伝承を受け継ぎ、地元ゆかりの人物の足跡を記憶に留めるための顕彰碑が設置されています。大阪市天王寺区の生國魂(いくたま)神社にこのほど、大阪生まれの作家織田作之助…

第67回/「ご神仏の仕事学」(13)平成の寺小屋・鎮守の森教室

●お祭りの縁日は異空間 お祭りの舞台となる地元の神社。町内を練り歩いたおみこしやだんじりの宮入神事が、祭礼のクライマックスになるケースが多いようです。 子どもたちにとって、楽しみは縁日。境内や参道に立ち並ぶ縁日はとびっきりの異空間で、心の解放…

第66回/「ご神仏の仕事学」(12)お祭りは地域の一貫教育校

●夏祭りと秋祭りの違い 読者諸賢の地元や出身地では、秋祭りは終わりましたか。わたしの住むまちでは、一般的なおみこしではなく、「地車(だんじり)」が町内が練り歩きます。 お祭りが近づくと、若者たちが公園でだんじり囃子の稽古に余念がありません。五…

第65回/「しごと談議」(16)締め切り外しの悪夢

●悪夢の舞台は昭和の編集局 私の悪夢にはふたつの定番があります。ひとつは学期末試験に落第して大学を卒業できなくなる悪夢。年に数回うなされる程度ですが、もうひとつの悪夢は、週に数回の頻度で襲来します。新聞原稿の締め切り直前になって、原稿書きが…

第64回/ご神仏のしごと学(11)赤々と窯の火が燃えるまち

●大阪ガラス発祥の地 神社仏閣は公園と同様、地域の公共スペースの役割を兼ねているため、地域ゆかりの史実や伝承にちなむ顕彰碑が建立されるケースが少なくありません。社寺めぐりの楽しみのひとつです。大阪天満宮の一隅に、「大阪ガラス発祥之地」の石碑…

第63回/ご神仏の仕事学(10)神仏連携で青空見本市を同時開催

●均一台は「幻の戦後日本思想大全集」 きょう十一日、大阪を代表する青空古本市が二か所で同時に始まりました。場所は大阪天満宮と四天王寺です。大阪の有力古書店が境内にテント張りの仮設店舗を開設し、膨大な古書を運び込んで古本ファンを待ち受けていま…

第62回/しごと談議(15)月間千キロの併走

●惨敗の要因はスイーツの誘惑 野球、ラグビーに続いて、陸上長距離競技の監督です。関西に拠点を置く社会人女子有力チームの監督に取材したことがあります。 選手が寝食をともにしている合宿所の食堂で、監督と向き合いました。監督は学生時代、箱根駅伝の花…

第61回/しごと談義(14)勝っても負けても「いい試合だった」

●練習通りにやればいい 明大運動部、ふたりの「御大」伝説、前回の島岡吉郎野球部監督に続いて、ラグビー部の北島忠治監督について書きますが、昨日、悲しいアクシデントが起きてしまいました。対抗戦の対筑波大学戦。決してたやすい相手ではないものの、開…